
「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない…」
多くの経営者が抱えるこの悩みの鍵を握るのが、「営業利益率」です。単に売上を追求するだけでなく、どれだけ効率的に利益を生み出せているかを示すこの指標は、企業の真の収益力を測る上で不可欠です。本記事では、経営者や企業の意思決定に関わる皆様が、営業利益率の基本から、その重要性、改善のための具体的な施策、さらには業界別の目安までを網羅的に理解できるよう、分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、自社の営業利益率を正確に把握し、収益構造を改善するための確かな一歩を踏み出せるはずです。
目次
営業利益率とは?基本を理解する

営業利益率の定義
営業利益率とは、企業が本業でどれだけ効率的に利益を上げているかを示す重要な経営指標です。具体的には、売上高から商品やサービスの原価(売上原価)と、販売活動や管理活動にかかる費用(販売費及び一般管理費、略して販管費)を差し引いた「営業利益」が、売上高に対してどれくらいの割合を占めるかを示します。
この数値が高いほど、本業での収益性が高い健全な企業運営ができていると判断できます。経営者にとって、自社の主要な事業活動がどれだけ効率的であるかを客観的に評価するための、最も基本的ながら不可欠な指標の一つと言えるでしょう。
営業利益率の計算方法
営業利益率は、以下の計算式で算出されます。
ここで言う「営業利益」は、以下の計算で求められます。
営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費
具体的な例を挙げてみましょう。
- 売上高:1億円
- 売上原価:4,000万円
- 販売費及び一般管理費:3,000万円
この場合、まず営業利益を計算します。
営業利益=1億円-4,000万円-3,000万円=3,000万円
次に、この営業利益を使って営業利益率を算出します。営業利益率=3,000万円÷1億円×100=30%
この計算式を理解することで、自社の財務諸表から簡単に営業利益率を算出し、現在の収益力を把握できるようになります。
なぜ営業利益率が重要なのか?

営業利益率は、単なる会計上の数字ではありません。企業の収益力、経営効率、そして将来性を判断するための、非常に重要な経営指標です。ここでは、なぜ営業利益率が経営においてこれほどまでに重視されるのかを具体的に解説します。
企業の収益性を測る指標として
営業利益率は、企業が本業でどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。売上高がどれだけ大きくても、そこから本業のコスト(売上原価や販管費)を差し引いた営業利益が少なければ、企業の収益力は低いと判断されます。
この利益率は、単なる売上高の増減だけでなく、企業が持続的に利益を生み出す「稼ぐ力」を客観的に評価するために不可欠な指標なのです。
経営効率の判断基準
高い営業利益率は、企業がコスト管理や業務プロセスにおいて効率的な経営を行っている証拠です。例えば、製造業であれば原材料の仕入れコストを抑え、小売業であれば店舗運営費用を最適化するなど、本業における無駄を排除し、効率性を追求することで営業利益率は向上します。
この指標を定期的に確認することで、経営者は自社のコスト構造や業務プロセスにおける改善点を発見し、より効率的な経営へとつなげることができます。
投資家や金融機関からの評価
投資家や金融機関は、企業の安定性や成長性を判断する上で営業利益率を非常に重視します。安定して高い営業利益率を維持している企業は、本業で堅実に利益を上げていると評価され、投資対象としての魅力や、融資を受ける際の信用度が高まります。
逆に営業利益率が低い、あるいは不安定な企業は、資金調達やM&A(合併・買収)の際に不利になる可能性があり、企業価値を正しく評価してもらうためにも重要な指標となります。
競合他社との比較
営業利益率は、同業他社との競争優位性や自社の課題を把握するためのベンチマークとしても活用できます。業界平均や競合他社の営業利益率と比較することで、自社の収益構造が業界内でどの位置にあるのか、あるいはどのような点で劣っているのかを客観的に評価することが可能です。
この比較を通じて、価格設定、コスト構造、販売戦略など、改善すべき具体的な領域を特定し、競争力を強化するための戦略を立てる上で非常に有効な情報となります。
営業利益率が低い原因と改善策

自社の営業利益率が低いと感じる場合、その原因は多岐にわたります。ここでは、主な原因と、それらを解決するための具体的な改善策について解説します。
売上高の減少
営業利益率が低下する最も直接的な原因の一つが、売上高の減少です。市場環境の変化、競合他社の台頭、顧客ニーズの変遷、あるいは自社製品・サービスの魅力低下などが要因となり、売上が落ち込むと、固定費の負担が相対的に増え、結果として営業利益率を押し下げます。
売上原価の上昇
売上原価とは、製品の製造やサービスの提供にかかる直接的な費用です。原材料費の高騰、仕入れコストの増加、生産プロセスの非効率化、あるいは歩留まりの悪化などが原因で売上原価が上昇すると、たとえ売上が横ばいであっても、粗利益が減少し、営業利益率を悪化させることになります。
販売費及び一般管理費(販管費)の増加
販売費及び一般管理費(販管費)は、商品の販売や会社全体の管理にかかる費用です。人件費、広告宣伝費、家賃、旅費交通費、消耗品費などがこれに該当します。売上が伸び悩む中で販管費が過剰に増加したり、費用対効果の低い支出が増えたりすると、収益が圧迫され、営業利益率の低下を招きます。
営業利益率を改善するための具体的な施策

営業利益率を改善するためには、売上を増やすか、コストを削減するか、あるいはその両方を同時に進めることが基本です。以下に、具体的な改善策をいくつかご紹介します。
コスト削減のポイント
コスト削減は、営業利益率を短期間で改善できる有効な施策です。売上原価と販管費の両面から見直すことが重要となります。まず、複数の仕入れ先から見積もりを取得し価格交渉を行うことで、原材料や商品の調達コストを抑えられます。次に、消耗品費や光熱費、通信費などの日常経費を精査し、無駄を削減します。
さらに、業務プロセスの効率化やRPA導入、残業削減により人件費を最適化することも効果的です。加えて、家賃やリース料などの固定費も契約内容を再検討することで、継続的な利益改善につながります。
価格戦略の見直し
価格設定は営業利益率に直結する重要な要素です。競合状況や顧客が感じる価値を踏まえ、最適な価格戦略を設計することが求められます。品質やブランド力に強みがある場合は、適切なタイミングで値上げを実施することで、売上を維持しながら利益率を高めることが可能です。
また、独自の機能やサポートを加える高付加価値戦略により、価格競争から脱却できます。さらに、バンドル販売や上位モデルへのアップセルを推進することで顧客単価を引き上げ、収益性の向上につなげられます。
販促活動の最適化
販促活動は売上拡大に欠かせませんが、常に費用対効果を意識することが重要です。まず、ターゲット層を明確にし、最適なチャネルとメッセージで訴求することで無駄な広告費を削減できます。
さらに、Web広告やSNS、コンテンツマーケティングなど効果測定がしやすいデジタル施策を活用し、投資対効果を可視化します。加えて、各施策の成果を継続的に分析し、効果の低い取り組みは改善や停止を判断することで、販促費の最適配分と利益向上につなげられます。
業務効率化の推進
業務効率化は人件費や間接コストの削減につながり、結果として営業利益率の向上に貢献します。まず、クラウド会計やCRM、SFAなどのITツールを導入し、手作業中心の業務を自動化・標準化することが効果的です。
さらに、専門性の高い業務や定型作業をアウトソーシングすることで、自社の人材をコア業務へ集中させ、生産性を高められます。加えて、目標管理の徹底や研修、働きやすい環境整備を通じて従業員の能力を引き出し、限られた時間で最大成果を生む体制を構築することが重要です。
業界別!営業利益率の目安と平均値

自社の営業利益率を評価する際、その数値が良いのか悪いのかを判断するためには、同業他社の水準や業界全体の平均値を把握することが非常に重要です。ここでは、主要な業界の平均営業利益率と、それぞれの業界が持つ特徴や注意点について解説します。
主要業界の平均営業利益率(参考)
業界によってビジネスモデルやコスト構造が大きく異なるため、営業利益率の水準も様々です。以下に、いくつかの主要業界における平均営業利益率の目安と、その特徴をまとめました。
これらの数値は一般的な傾向を示すものであり、企業規模や特定の事業内容によって変動する可能性があることをご理解ください。
| 業界 | 平均営業利益率 | 特徴・傾向 |
|---|---|---|
| 製造業 | 3%〜7% | 設備投資が大きく、原価や生産効率が収益性に直結しやすい。 |
| 小売業 | 1%〜4% | 薄利多売の傾向があり、仕入れコストや人件費が影響しやすい。 |
| ITサービス業 | 8%〜15% | ソフトウェア開発やコンサルティングなど、人件費が主なコスト。高付加価値サービスは利益率が高い。 |
| 建設業 | 2%〜6% | プロジェクトごとの原価管理が重要。天候や資材価格の変動リスクも。 |
| 飲食業 | 1%〜5% | 食材原価や人件費、家賃などが大きく影響。回転率や客単価が重要。 |
業界ごとの特徴と注意点
上記の表からもわかるように、業界によって営業利益率の平均値には大きな開きがあります。これは、各業界が持つ独自のビジネスモデルやコスト構造、競争環境が大きく影響しているためです。
例えば、ITサービス業は比較的高い営業利益率を維持しやすい傾向にありますが、これは製品の製造原価が低く、主に人件費がコストの中心となるためです。一方、製造業や建設業では、大規模な設備投資や複雑なサプライチェーン、資材価格の変動などが収益性を左右します。また、小売業や飲食業では、仕入れコスト、人件費、家賃といった固定費が大きく、薄利多売の傾向が強いため、相対的に営業利益率が低くなりがちです。
したがって、自社の営業利益率を評価する際には、単に数字の大小で判断するのではなく、必ず同業他社や業界平均と比較し、その背景にある業界特有の事情を理解した上で分析することが重要です。これにより、より客観的かつ実態に即した経営判断が可能になります。
粗利率、経常利益率、純利益率との違い

ここまで営業利益率について詳しく解説してきましたが、企業会計には他にも重要な利益率の指標がいくつか存在します。それぞれの指標がどのような意味を持ち、営業利益率とどう関係しているのかを理解することで、企業の収益構造をより多角的に分析できるようになります。
粗利率(売上総利益率)
粗利率(売上総利益率)は、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」が、売上高に占める割合を示す指標です。
計算式:粗利率=(売上高–売上原価)÷売上高×100
この粗利率は、企業が提供する商品やサービスの競争力、および仕入れや製造にかかるコスト効率の良さを示します。粗利率が高いほど、本業の基本的な収益力が高いと判断でき、価格設定の優位性や生産体制の効率性が高いことを意味します。
経常利益率
経常利益率は、企業が通常の事業活動全体でどれだけの利益を上げているかを示す指標です。営業利益に、本業以外の収益(営業外収益)や費用(営業外費用)を加減した「経常利益」が売上高に占める割合で算出されます。
計算式:経常利益率=経常利益÷売上高×100
営業外収益には受取利息や受取配当金などが、営業外費用には支払利息や手形売却損などが含まれます。経常利益率は、本業の儲けだけでなく、資金調達や資産運用なども含めた企業全体の総合的な収益力を評価する際に重要です。
純利益率
純利益率(税引後当期純利益率)は、企業の最終的な儲けが売上高に占める割合を示す指標です。経常利益から、突発的に発生した特別な損益(特別利益・特別損失)や法人税などを差し引いた「当期純利益」を用いて計算されます。
計算式:純利益率=当期純利益÷売上高×100
特別利益には固定資産売却益などが、特別損失には災害損失やリストラ費用などが該当します。純利益率は、株主にとって最も重要な指標の一つであり、企業の最終的な経営成績を表すため、投資家が企業の価値を判断する際にも重視されます。
各利益率の関係性
これらの利益率は、損益計算書の上から順に計算され、それぞれ異なる段階での収益性を示しています。
| 利益率の種類 | 計算式 | 示す意味合い | 着目点 |
|---|---|---|---|
| 粗利率 | (売上高–売上原価)÷売上高 | 商品・サービスの競争力、原価効率 | 価格設定、仕入れ・製造コスト |
| 営業利益率 | 営業利益÷売上高 | 本業の収益力、経営効率 | 販売戦略、販管費の管理 |
| 経常利益率 | 経常利益÷売上高 | 企業全体の総合的な収益力 | 営業外収益・費用(利息、配当など) |
| 純利益率 | 当期純利益÷売上高 | 最終的な儲け、株主への還元 | 特別損益、税負担、最終的な企業価値 |
粗利率は「売上から仕入れや製造にかかった費用を引いた儲け」、営業利益率は「粗利から販売費や一般管理費を引いた本業の儲け」、経常利益率は「営業利益に本業以外の収益・費用を加味した通常の事業活動全体の儲け」、そして純利益率は「すべての費用と税金を差し引いた最終的な儲け」という関係性です。
これらの利益率を複合的に分析することで、企業の収益構造における強みや課題を詳細に把握し、より効果的な経営戦略を立てることが可能になります。
営業利益率をKPIとして経営に活かす

営業利益率は、単なる過去の業績を示す数字ではありません。これを経営目標(KPI:重要業績評価指標)として設定し、日々の経営活動に組み込むことで、企業の収益力を継続的に向上させることが可能になります。
KPI設定の重要性
営業利益率をKPIとして設定することは、企業にとって非常に重要です。目標を明確にすることで、従業員一人ひとりが自身の業務が会社の利益にどう貢献しているかを意識しやすくなります。これにより、組織全体でコスト意識や売上最大化への意欲が高まり、具体的な行動変容を促す効果が期待できます。
関連記事:インサイドセールスで成果を出すためのKPI|設定方法や運用のポイントも解説
目標設定と進捗管理
営業利益率のKPIを設定する際は、過去の実績や業界平均、そして自社の将来的な事業戦略を総合的に考慮し、現実的かつ挑戦的な目標を設定することが重要です。目標設定後は、月次や四半期ごとなど定期的に進捗をモニタリングし、目標と実績の乖離がないかを確認します。早期に問題を発見し、軌道修正することで、目標達成の確度を高めることができます。
部門・担当者への落とし込み
設定した営業利益率の目標は、全社で共有するだけでなく、各部門や担当者の具体的な行動目標へと分解して落とし込むことが大切です。例えば、営業部門には売上目標、製造部門には原価削減目標、管理部門には販管費削減目標など、それぞれの役割に応じたKPIを設定します。これにより、各人が自身の責任範囲で営業利益率向上に貢献できる道筋が明確になります。
PDCAサイクルでの活用
営業利益率をKPIとして活用する上で、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回すことは不可欠です。
- Plan(計画):営業利益率の目標を設定し、その達成に向けた具体的な戦略や施策を計画する
- Do(実行):計画に基づき、各部門や担当者がそれぞれの業務を実行する。
- Check(評価):定期的に営業利益率の実績と目標を比較し、進捗状況や施策の効果を評価する
- Action(改善):評価結果に基づいて、計画の見直しや新たな改善策の実施を検討し、次のサイクルへとつなげる。
このサイクルを継続的に繰り返すことで、営業利益率の持続的な改善を実現し、企業の収益力を高めることができます。
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セリーズ(Selly-s)は、売上拡大だけでなく営業利益率の改善まで見据えた営業支援を提供します。単にアポ数や受注数を増やすのではなく、商談化率・受注率・LTVを意識した営業設計を行い、無駄な営業コストを抑えながら利益を最大化。営業理解のある専門スタッフがKPI設計から実行・改善まで伴走し、収益構造の最適化を実現します。
月30時間から導入可能なため、売上は伸びているが利益が残らない企業や、営業コストが肥大化している企業にも最適です。営業活動の可視化と仕組み化を通じて、持続的に営業利益率を高める体制を構築します。
まとめ:営業利益率を改善し、企業価値を高めよう
本記事では、企業の真の収益力を示す重要な経営指標である「営業利益率」について、その定義から計算方法、なぜ重要なのか、低い原因と改善策、さらには他の利益率との違い、KPIとしての活用法までを詳しく解説してきました。
営業利益率は、売上から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた「営業利益」を売上高で割ることで算出され、本業でどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。この指標を正しく理解し、定期的に分析することで、自社の経営課題を特定し、具体的な改善策を講じることが可能になります。
今後は、本記事で得た知識を基に、ぜひ自社の営業利益率を算出し、業界平均や過去の推移と比較してみてください。そして、売上高の減少、売上原価の上昇、販管費の増加など、低い原因となっている要素を特定し、コスト削減、価格戦略の見直し、販促活動の最適化、業務効率化といった具体的な施策を計画・実行することが重要です。
営業利益率の改善は、単に目先の利益を増やすだけでなく、企業の持続的な成長と企業価値の向上に直結します。ぜひ、この機会に自社の収益構造を見直し、より強固な経営基盤を築いていきましょう。




